やりたいと思うことを、見つけてください
風間 頼子 さん
株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンター
知能情報研究部 ユニットリーダ 主任研究員
略 歴
東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻(当時)博士課程修了後、株式会社日立製作所入社。博士(工学)。
博士号を取得しようと思った理由を教えてください。
小学生の頃から「研究者になりたい」と思っていましたので、医師になりたければ医学部に進学し医師免許を取得するのと同様に、博士課程に進学し、博士号を取ることは私の中では心に決めていました。
博士課程ではどのような研究をされていらっしゃいましたか。また、どのように就職先を決められたのでしょうか。
宇宙に興味があり、人工衛星から得られるデータを用いて月の地質を解析する研究をしていました。このデータ解析のスキルを有していたことがマッチしていたのだと思いますが、たまたま日立の方に「職場見学に来ないか」とお声がけいただきました。折角だからと訪問して、研究紹介をしたところ、実はそれが入社面接で内定が出てしまった、という(笑)。博士課程3年生の春先のことでしたが、漠然と就職先として想定していた大学や国の研究機関での採用が本格化するのが秋頃でしたので、このタイミングで決めてしまって良いものか、かなり悩みました。この時になって初めて周囲に「企業の研究所で働くのは、どうでしょうか?」と聞いてまわったりもして、ポジティブな回答が多かったことも後押しとなり、心を決めました。
現在の仕事について教えてください。
入社してから現在まで一貫して、「人工衛星を用いたリモートセンシング」の研究を進めています。大学院時代から継続しているテーマでもあります。また、ここ数年では、弊社インダストリアルプロダクツビジネスユニットと共同で「ロボット群制御」の研究も始めました。具体的には物流向けの搬送ロボット制御の最適化です。eコマースの普及と共に倉庫の大規模化そして機械化も進んできています。搬送ロボットにも様々なタイプがありますが、私たちが開発しているのは、棚を持ち上げて作業者のところまで持ってくるシステムです。10台、100台と大規模になったときに群としてどう最適に動かすと業務を効率良く遂行できるかという課題に対して、学習系や複雑系シミュレーションの手法を用いて検討を進めています。
博士号を取得して良かったと思うことはありますか。
博士号を持っていること自体については、普段はあまり意識していませんが、社外の方と名刺交換する機会があると、逆に意識させられることがありますね。博士学生の時に指導教員の先生から「あなたが取得するのはDoctor of Philosophy(Ph.D.)なのだから、自分の哲学を見つけなさい、そのために良く思考しなさい」と言われていました。ですから、博士課程では思考することを意識してきたと思います。もちろん、研究活動を通して得た数学や解析技術、プログラミングなどのスキルも役に立っていますが、深く思考する力は、博士課程に進学して博士号を取得したからこそ身に付けられた力だと思います。
企業で働く醍醐味は何でしょうか。
入社当時はあまり意識していませんでしたが、やはり「製品を作り、世の中に提供できること」でしょうか。また、研究所にいても、営業や製造現場など社会と直結した部門の方々とも連携する機会が多くあります。色々なアイデアを頂いたり、技術の広がりを一緒に考えたりできるので、とても刺激的です。
逆に、関係者間で技術に関する共通認識を持つことには日々苦労しています。技術開発目標を掲げ、達成を目指して日々奮闘するわけですが、達成目標には各部門の思惑が絡んできます。あまりに現状からかけ離れた目標を提示されてしまった場合に あまりに現状からかけ離れた目標を提示されてしまった場合には、その目標を設定した理由・そもそもの目的などに立ち戻って共通理解を再度共有できるように立ち回ることもあります。
ユニットリーダにはいつ昇任されましたか。
2年ほど前です。その前年に出産から育児休業を経て復帰し、まず時間のやり繰りに苦労していましたが、ユニットリーダになってから、さらに、マネジメント業と自分の研究とのバランスを取るのに四苦八苦しています。
ユニットには数学や物理、情報科学など、様々な専門分野から集った10名のメンバーがいます。(それだけの人数が集まれば)人間関係も容易にはいきませんが、周囲からアドバイスを頂きながら、より良い成果、新しい製品を世の中に出せるように尽力しています。
後輩女子学生へのメッセージをお願いします。
やりたいと思うことを、早く見つけられるといいですね。そしてその実現のために、できることを増やしていってもらえればと思います。
ありがとうございました。
日立返仁会は博士号の学位を持った日立関係者2300名余による有志団体です。
(取材者の所属等は取材当時のものです)